所長のエッセイ

所長のエッセイ

あたりまえという名のお守り

祖父母は明治、両親は大正生まれだ。
「子供は親のいうことを聞くのが当たり前」という世相で、それをあたり前にして育った。
当然わがままや身勝手に両親は厳しかった。
その反面幼いうちにしっかりと抱きとめ、絵本を何回でも読んでもらった。親達は真剣に叱ったり躾たりしたのだった。それに比べてこのごろは となるのが気のおけない友人との世相嘆き節である。
「学校で教えないのかしら」「結局は民度が低いのよ」と 独断と偏見によるワイワイガヤガヤの放談がはじまった。

 「学問は諸々の徳の母であり、不徳はすべて無学の所産である」というが そうも私は信じていないのである。

とモンテーニュの随想録にある。まるで現在の日本のことをいっているのだろうか。
優秀な知識人が、してはいけないあたり前のことをしでかして世間を驚かせている。高学歴で無分別な社会の今。あたり前という美徳を心のお守りとして 一生 むきあって生きていきたいと誓う。

所長 諌山静香