所長のエッセイ

所長のエッセイ

  草木が萌え始めた春の山を俳句では、「山笑う」といいます。我が家の裏に竹林がある。筍がずんずん伸びて皮を落としている。
凛とまっすぐに伸びる若竹。生命力をみなぎらせた筍。しなやかにそよぐ茉鞘。春は筍の季節である。
この時期、竹林には命の輝きが満ちてくる。芽吹いた筍は日ごとに生成し、あれよあれよという間に竹の子から竹になる。
竹林は、私に郷愁をよびおこしてくれる。今の子ども達は、もう知らないだろうか、竹で父が作ってくれた貯金箱や兄と夏休みに遊んだ水鉄砲、竹馬で日が暮れるまで競争し、竹林を駆け回った記憶は今も鮮やかに蘇る。
暴風雨の竹林はまさに荒れ狂う日本海のようだった。しかし台風が去っていった竹林の竹は一本も折れていなかった。直径一メートルもの大木が何本も折れていたのに。
風雨に耐え、試練にうち勝ったそのしぶとさ・・・竹の力を改めて感じずにはいられなかった。竹を見ると爆発的なエネルギーを肌に感じる。驚異の生命力。筍の意気込みを私も見習って一節一節ごとに成長していきたいと思う。

所長 諌山静香