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小林茂広博士について

プロフィール

昭和16年、東京大学理学部物理学科卒。理学博士。
香川大学名誉教授、徳島文理大学教授。
また、日本におけるコンピュータ教育の草分け的存在として日本教育工学協会会長を務め、教育工学推進の功績により通産大臣の表彰を受ける。
数理的玩具教材多数考案。
『考える遊び』教育研究所創立。
勲三等旭日中綬章受賞。
平成6年9月没。

小林博士の「数と図形の融合学習」とは

小林博士は受験を目標とした数偏重の今日の算数教育の在り方に疑問を抱き、
算数は難しい定理の暗記や計算問題ばかりを扱う抽象的な世界ではなく、
子供たちに「手」で触って実感できる楽しい不思議に満ち溢れた世界であることを
経験させる必要性を説きました。
そこで開発されたのが、この「数と図形の融合学習」です。
大切なのは1+1=2だと暗記させるのではなく、
1と1のものを合わせると本当に2になることが
数・量において確認できる数理的な経験をさせることなのです。

それには抽象的な数字に偏った従来の算数指導とは全く発想を異にする方法で
幼児期から数概念を育てる算数指導を行う必要があります。
この「図形の学校・たけのこ会」の個々の能力に合わせた
数と図形の融合学習プログラムは、
多くの子どもたちに福音をもたらすものと信じております。

小林博士の「レディネス遊び」とは何か

英才教育とか知能開発とか幼児教育とか言う言葉が溢れておりますが、いずれも激化する受験戦争に備えて、うまく目的の学校に合格させるための技術の錬磨を目標としている感があります。

どこでもいずれ学校で学ぶ様々な知識を先取りして教え込むことにしのぎを削っているような印象を受け、窒息しそうな子供たちを見るにつけ胸が痛みます。

知識を一方的に詰め込む教育では子供の柔軟な思考力や自由な発想は育ちません。教わったことしかできない子供や新しいことを自発的に工夫する意欲の欠如した子供が激増しているという悲しむべき現象は知識偏重教育の当然の結果とも考えられます。

知識ではなく知能を高める教育は幼児期から開始すべきです。暗記型の押しつけ勉強ではなく、学んだことから想像力を働かせて、自分で考え、工夫する習慣をつけさせること、これが将来、問題解決能力となるのです。幼児教育の根本はこうした能力の芽を育てることに他ならないと、私は信じています。

自分の頭で物を考え、判断して行動できる

小林博士の『数理色板・数理積木』は、自分の頭で物を考え、判断して行動できる『私』の確立を目標として開発された教授法です。何故、『レディネス遊び』が思考力の増進に目を見張るような効果を発揮するかというと、紙と鉛筆を与えて問題を解かせる従来の英才教育のスタイルとは全く異なる操作・発見学習と言う特異な方法で子供に接するからです。

『手』で考えさせる教育、これが『レディネス遊び』の神髄ですが、この事は小林博士が物理学の教授であったことに起因するものです。勉強は嫌でも遊びや実験の嫌いな子供はいません。色板や積み木やサイコロ(いずれも博士の発明による数理的工夫がなされた教材)を実験道具として手渡され、それを手で操作しているうちに課題の答えや意外な事実を次々発見できるプログラム化された遊び学習に子供たちは夢中になります。

3歳時が90分の授業をむずがらず集中して受講できるのは、面白くてたまらないからに他なりません。答えは1つと限らないという『レディネス遊び』の特徴の一つである多解性が子供を夢中にさせ、知らないうちに思考力や探究心や持続性が育っているのです。この特徴を生かして数理感覚を高め、造形的センスを育てる遊び学習を行うのが『レディネス遊び』なのです。

頭を悩ませる低学年教育の算数

低学年教育に携わる者の頭を悩ませるのは、算数と幼児をいかに出会わせれば良いかということだと思います。

多く見かけるのは、果物や鉛筆など手近な具体物を使って数読みから始めてまず、1から10までの数字を段階的に教え込み、数の順番がわかれば先を急いで1+2や3−1などの数式による加減算に移行してしまいます。そして子供が答えを正しく答えさえすれば、やれ掛け算、割り算と先を急ぐのです。しかし、これで本当に子供は数の意味や計算の仕組みを理解していると言えるのでしょうか

答えは残念ながらノーです。その証拠に数式を記号として暗記させられたために高学年になって文章題を自分で式を立てて答えられない子や、分数で落ちこぼれる学童が激増しているのです。文章題を見つけて『これは引き算なの足し算なの、それを言ってくれたらすぐ解けるのに』と大人をぞっとさせることを平気で言ってのける子供のなんと多いことでしょう。

算数とは本来、数と図形のバランスのとれたものです。しかし、今の教育では図形の指導や学習が十分ではありません。その理由は適当な教材がない事と図形教育は評価に手間がかかるからです。計算を教えてドリルをさせておけば赤鉛筆1本で簡単に評価・結果のでる数字教育は教える側には便利この上ないものなのです。

しかし、子供が算数についていけなくなる最大の理由はここにあります。数字は元来抽象的なものです。例えば数字の2が表現するものは、人数でも重さでもあり得るのです。つまり、数字には本当は具体的な数量を表す意味があるにもかかわらず、そこを理解させずに機械的に計算ドリルを大量にさせても正しい数概念を形成する事は決してなりません

図形学習による数概念の形成

小林博士の『数理色板・数理積木』では、数概念の形成のために図形学習を重視しています。

色板さんすうで十分に遊び学習を経験した子供は分数で落ちこぼれるような心配は全くありません。例えば1 +1の答えは1つしかありませんが、色板で図形作りを経験させた子は図形の足し算ではいろいろな形の2があることを知っています。いろいろな2のあることに子供は混乱するのではないかと考えるのは大人の心配しすぎです。子供は色板の操作で学んだ量の足し算の多解性から数字の持つ抽象性を的確に把握してくれます。そしてこの経験があれば3分の3 = 4分の4 = 5分の5 = 1といった分数概念も抵抗なく自分のものにしてしまえるのです。

小林博士の『数理色板・数理積木』では色板やサイコロだけでなく、数理的に優れた工夫の施された『知恵の積木234』も用いられます。また、この他にどこにでもあるマッチ棒やビー玉や、数字駒を素晴らしい知能開発の教材に変えてしまうプログラムも準備されております。

また、それだけに止まらず、文章題に強くなる非常にユニークな○描き解法という方法も考案されております。3歳児でも問題の題意に沿って○を書くだけで例えば鶴亀算が解けてしまい、問題をしているうちに自分で鶴亀算の公式が作れるようになります。全く魔法のようなしかし理に叶ったアナログ的文章題解法は数理的思考力を育てる方法として広く高い評価を受けております。

「レディネス遊び」は物理学者の特質を生かした手法

物を使い具体的に思考すると言う物理学者の特質を十二分に生かした『レディネス遊び』の方法は、現代の教育を取り巻く色々な問題の解決策を明快な形で私どもに示唆してくれております。様々な能力の子供の力を引き出し、引き上げるのが『レディネス遊び』なのです。

『レディネス遊び』をすると算数のどの単元の学習に役立つかと問われることがありますが、すべてにというのが私の答えです。

算数は数と図形から成りますが『レディネス遊び』のプログラムは数と図形の融合学習に役立ちます。

例えば、四則演算の仕組みを色板や積木の量として捉え、把握させ、分数の概念の形成やその計算の仕組みの理解させるには不可欠な教材と言えましょう。平面や立体の図形について対称性や合同(合同体) ・相似(相似体)を手で造形を行うことによって、具体的に確認しながら学べる稀有の教材と言っても過言ではありません。

「レディネス遊び」を導入した教室からの報告

幼児期から『レディネス遊び』で学習レディネスを形成しておきますと、次のような特質が見られると『レディネス遊び』を導入なさっている先生方からご報告をいただいております。

1.学校で学ぶ抽象的な定理や公式を手で学んだことの事実の裏付けとして具体的な真理として抵抗なく受け入れる。

2.未知の問題に遭遇した時、過去の自分の経験に照らして、分析・推理して想像力を働かせ、自分で解決法を工夫することができる。

3.物事を系統的に捉え、システマチックな思考力を持つようになる。

4.記録・分類の習慣化等、学性が養われる。

5.観察力・探究心・思考力・持続性・自発性・創造性等に於いて優れる。

幼児期から過酷な競争に曝され、危機的状況下に置かれた日本の子供たちに素晴らしい遊びのあることに目覚めさせ、精神と体の健全な発達を心から願って小林博士が考案しました『レディネス遊び』で、1人でも多くの子供たちが子供らしく生き生きと成長していくことを切望しております。

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